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辻村深月『盲目的な恋と友情』

盲目的な恋と友情

盲目的な恋と友情

「恋」に溺れる主人公と、彼女のそばで「友情」に溺れる友人のお話。あるいは、恋や友情による社会的結びつきの実践が提供してくれる「地位」(○○の恋人、○○の夫・妻、○○の親友など)と、それがもたらしてくれるであろう「利潤」の追求に、意識的にも無意識的にも囚われた主人公たちのお話です。自分の文化資本に照らしてふさわしい相手、自分のコンプレックスを解消してくれる相手、自分の破綻・没落しつつある出自の代替となり、自身の社会的上昇を実現してくれる相手などなど。それらを探し求めるゲームは、経済的安定の追求とくらべて、本質からして終わりのない、より疲労困憊させられるゲームです。柚木麻子の『けむたい後輩』などもそうですが、こういう差異化・卓越化の実践のお話は重たいですがきらいではありません。