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N・エリアス『文明化の過程』をやっと読み終えた

文明化の過程〈上〉ヨーロッパ上流階層の風俗の変遷 (叢書・ウニベルシタス)

文明化の過程〈上〉ヨーロッパ上流階層の風俗の変遷 (叢書・ウニベルシタス)

『文明化の過程』をやっと読み終えました。上巻を読み始めてからもはや何ヶ月かかったのかも覚えていません。。。

本書は、中世〜近代にかけてのフランスを主なターゲットとして、「文明化」の過程──人びとの言動が徐々に「洗練」されていき、同時にまたその「洗練」度合いによる差異化(卓越化)が目指される相互依存性の高い一つの社会空間が立ち現れてくる過程の推進原理を解き明かそうというものです。

著者によれば、「文明化」の過程の原理がまずはっきり観察されるのは戦士社会の中心部においてです。中世〜近代にかけて、戦士社会(貴族社会)においては中央集権化が進み、物理的暴力と徴税権の独占がますます進展する。とりわけ旧来において独立した戦士であったもののうちでも弱小のものやその才能によって召し上げられた市民階層身分のものが、宮廷という狭い空間において共同生活を始める。貨幣経済化の進展は戦士たちの経済的没落と市民たちの上昇を促進することでこの流れを助ける一方で、商業の活性化によってますます広範囲の市場とそこに生活する人びとを相互依存性の網目の中に組み込んでいく。

それらの変化により、従来であれば比較的容易であった「敵か味方か」というような二分法でのものの考え方(それはいつ果てるとも知れない私闘の連鎖につながる)は困難になり、自身の言動の影響が(従来に比べれば)長期的かつ広範囲の対人関係の考察なしには測れないという度合いが強まっていく。昔ながらの情感に身を任せた行動は抑制されざるをえない。個々人の経験と彼らに施される教育とによって、世代を追うごとに「超自我」が発達していく。そしてここから宮廷社会の「洗練」された行動様式とそれをめぐる差異化(卓越化)を相争う空間が醸成されてくる。。。

貴族社会の下層と上層、貴族社会と市民社会、宗主国民と植民地現地人などなどの各階層の構成員をプレイヤーとする、この「洗練」度合いを象徴的な賭け金としたゲームのなかでは、身体的(物理的)暴力を連想させる言動は厳しく律せられ、「不快な」振る舞い──たとえばとくに摂食や排泄に関するもの──も徐々に槍玉の対象となっていく。。。

こうした流れが上下巻で解説されています。丁寧とも冗長ともとれるかたちで類似のことが別の表現でなんども解説されるので、必然的にページ数が増えて、催眠効果もいや増してしまうわけです。後半は斜め読み気味にしてなんとか巻末までたどり着きました。。