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学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

入江亜季『乱と灰色の世界 7巻』

これにて完結。1〜6巻はようするにこの7巻での主人公の成長のためにあったのだ、ということでだいぶ長い前振りでした。もっとも登場人物が非常に多く、1巻あたりのお話のボリュームはそんなに大きくもないので、作中世界における時間経過としてはそれほどでもないのかもしれません。巻頭には物語のクライマックスにあたっておさらいのため(?)の登場人物紹介。

この人の作品の魅力のひとつは、とても細かにきれいに引かれた線で、登場人物のまつ毛だとか衣服の織り目だとかの前景から、家の柱の木目だとか屋外の樹木の枝のふしぶし浜辺に打ち寄せる波の模様だとかの背景まで、とにかく丁寧に描かれていること。コマごとにものすごくいろいろなアイテムが描きこまれているのですが、くどさがなくってあくまでさっぱりとした印象を受けるのが不思議です。

そしてもうひとつの魅力は、そのような画面のなかでキャラクターたちの表情や動作がとてもいきいきと描かれていること。登場人物たちが泣いたり笑ったりのシーンもそうですし、個性豊かな魔法使いたちのおかげでしっちゃかめっちゃかな戦いのシーンもそう。それによって紙幅がたくさん使われて物語の進行速度が抑えられている感はありますが、感情表現と身体動作がじっくり描かれたマンガは読み応えがあってよいです。

例によって次はどんな作品かなとたのしみです。