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学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

大崎梢『よっつ屋根の下』

よっつ屋根の下

よっつ屋根の下

父親が勤め先の病院内で内部告発者となったことで父・息子と母・娘で離れ離れに暮らすことになった家族。その一人ひとりの視点で描かれる物語です。

みんなもう一度一緒に暮らしたいと強く願っている。けれども家族・親族の関係性の中でどうしてもそれができずにいる。登場人物たちは良くも悪くも「家族」というものの中にがっちり統合されていて、結局は身動きが取れなくなっている。そういうはなしで、すっかり弛緩しきった「家族」関係のなかにいる読者にはちょっと実感の湧きにくい話ではありましたが。

もう一度「ひとつ屋根の下」に収まってしまうわけでもなく、それぞれが自分なりの気づきや成長を経て、最終的にはある種の和解へ、そして旅立ちへと向かってゆく姿というのはまま面白く読めました。