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中屋敷均『ウイルスは生きている』

ウイルスは生きている (講談社現代新書)

ウイルスは生きている (講談社現代新書)

久しぶりに分子生物学の本を読みました。書名から想像がつくとおり、ウイルスを生命の一カテゴリとして考えるべきとの認識/主張をベースに、種々のウイルスもしくは「ウイルスのような」「ウイルスに起源を持つらしい」核酸とオルガネラに関する紹介をしてくれるものです。

「生物」とは、執筆者が「伽藍とバザール」の譬えで述べているとおり、所詮はさまざまな起源を持つ核酸やタンパク質やそれらからなる半独立性の小機関など種々雑多の部品をもとに、自然淘汰過程で組み上げられた化学物質の集合体に過ぎません。
したがって傍から見れば、生物/非生物の線引きはどこまでいっても恣意的なものであり、それをめぐる議論はたぶんに構成されたものであって、その構成過程そのものの分析はともかく議論そのものへの「真剣な」参加には意味を感じられないのですが。しかし歴史学が「歴史」の定義について考え、社会学が「社会」の定義について考えるように、生物学が「生物」の定義について考えることは、結局ある学問分野の存立と──概念的な意味でも経済・政治的な意味でも──切っても切れない関係なのでしょう。

本書は明白な「生物」からそうでもない「生物?」まで、種々のカテゴリについて平易に紹介してくれるだけでなく、そうしたポリティクスについても何かしら仄めかしをしてくれます。。