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学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

光野桃『森へ行く日』

森へ行く日

森へ行く日

元来混沌とした世界をどう切り取り、区画分けし、秩序づけるか。不安定極まりない人間関係に安定を持ち込むためにいかにして人間を類型にはめ込むか。まあそこらへんは各人各様、筆者は気候によって育まれた性質という本質主義を持ち込むことで問題の解決をはかったようす。その本質主義にも気候主義にも同意はしかねるけれど、森の中で感じる癒やしと浄化の感覚みたいなのはよくわかる。社会のなかで対人関係や仕事、趣味といったかたちで自分を中心にして形成される社会的な身体を一定部分脱ぎ捨てて、一見死と再生の途切れ目のわからない“自然”の風景のなかに自分自身を位置づけ、想像の中で同化させてみせること。そこにひとつの安らぎがあるのは事実。そのためにはまた物理的な専用装備が必要になりがちというのが微妙なところでもあるけれど・・・。本書のなかに登場する森の風景や草花の近影にもそのような魅力が感じられてちょっと引き込まれる。