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コクリコ坂から

コクリコ坂から [DVD]

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ジブリ作品のなかでも宮崎駿監督作品ばかり見慣れているせいか、ファンタジーでない世界を描いた本作を意外に感じた。

ストーリーについては主人公ふたりのやり取りだけ見ればふつうの恋愛ドラマなのかもしれないけれど、この時代・この舞台を選んだというのは考えあってのことなのだろうと思う。

浅学ながら、“60年代”についての当事者たち自身によるその後の評価というのは、総括的な視点で見れば達成されなかったことのあれやこれやで表象される部分があるのではないかと想像していて、この作品としてはそこに対して「いや、あの時代にも少なくともこういうものはあった、こういう人びともいた、こういう達成はあった」と反論しているような感じを受けた。それは主人公たちの親の世代も同様であり、親から子、そして鑑賞者たちへ、“カルチエ・ラタン”に象徴されるなにものかが継承されている。無意味なものなどなかった、と。見当外れな想像かな…。

ところでこの作品とてCG技術は使用しているのだろうけれど、そこはジブリ、たとえばカラーやI.G、マッドハウスなどとは異なって、あからさまな演出──エキストラの3Dモデリングの使用に象徴される──などはしていないのに、画の書き込みとそれらの動きの緻密さがすごくて、また一段技術的に洗練された気がする。