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M12i.

学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

岩波刊のV・ウルフ『船出』

book

船出(上) (岩波文庫)

船出(上) (岩波文庫)

久しぶりに岩波文庫を手にしました。『船出』上巻はなるほどウルフらしい、彼女の後年の作品にある独特の雰囲気を感じさせるもので、読みやすくはないですが特別読みにくいということもなく、途中いくつかこれは翻訳上の不備ではないかなと感じる部分がある程度で、ストーリーを追うのに集中できました。ただ下巻がだめでした。機械翻訳に通したような意味をなさない単語の並びとしか思えない箇所がそこら中にあり、気になるというより読み飛ばす以外方法がない(意味を解せないので)部分が出てきます。私の詩的想像力の欠如の問題でしょうか? ともかく途中で読み進めるのを諦めました。。

S・アリミ「知識人の潰走」

ル・モンド・ディプロマティークの記事。執筆セルジュ・アリミ(Serge Halimi)。米国のトランプの大統領当選、フランスにおける国民戦線の躍進(そしておそらくは欧州のそこら中で見られるポピュリスト政党の躍進)の原因を論じる記事です。

ヒラリー・クリントンがトランプ支持の6200万人の有権者の大部分を「不幸な人びとのファイル」に分類した。その8年前の2008年4月、バラク・オバマは労働者階級で共和党を支持する有権者投票行動におけるパラドクスの原因を次の事実に求めた。「銃や宗教、自分たちとは境遇が異なる人びとへの反感、あるいは移民や国際商取引に対する敵対感情に固執する時、彼らは自分の利益に反して投票するという事実だ。理性と欲求不満のせめぎ合いだ。すなわち教養ある人びと、多くの場合、自分たちの選択が合理的であると信じて疑わない人びとは、ペリシテ人[古代パレスチナの住人で俗物を意味する]によってしばしば狼狽させられる。ペリシテ人は彼らを信用しないからだ」。・・・

アリミによれば、米国大統領選における今回の結果は政治家とマスメディアの連中の「知能のラシスム」(P・ブルデュー)に貶められた大衆による反撃だったのだ、ということになります。本当でしょうか? 太平洋の反対側の私たちの国の政治を思い浮かべるとちょっと現実感が湧きません。

こちら側で、例えば永田町や西新宿で有力な2・3のグループに関して、彼らが自身や自身の支持者たちの「知能」(もしくは「知性」)を以てして労働者や農業従事者たちを抑圧したり愚弄したりしたなどということは、なさそうです。まあ、公然たる公約違反だったり「記憶にない」とか「一任していた」とかの発言で、「政治」の分野そのものを愚弄している人間ならいっぱいいたような気もしますが、それはそれとして。そうするとともかくもアメリカ合衆国フランス共和国の独特の問題として理解すべきことなのでしょうか。

私にはアリミが提起したこの問題は、まさにそれこそがトランプやル・ペンらが「政治」や「選挙」に対して押し付けたフレーム、問題の建て方なのであって、それを反対側から定義し直しているだけという可能性はないかという気がしています。

長野香子『ミアのケーキは甘すぎる』

comics

『ノラ猫の恋』以来、久しぶりの長野香子作品。

この人の作品の描線は好みなのです。独特の丸みがあるように感じます。あくまで印象の話ですが。無垢な子どもや青春を謳歌している少年少女から経験豊富なお兄さんお姉さん、くたびれたり欲にまみれたりしている無精髭のおじさんまで、うまく描き出してくれます。

今回のは短編集で、最近ハルタに掲載されたものも収録されていました。雑誌をまったく読まないのでもう描いていないのかと思っていましたが(実際ブランクはあったようですが)。こうしてまた読むことができてよかったです。