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山田彩人『眼鏡屋は消えた』

眼鏡屋は消えた (創元推理文庫)

眼鏡屋は消えた (創元推理文庫)

解決編を通じて言明されるにいたる主人公たちの思想。それは、組織され・権威付けられた正義への失望に基づく、自然化され・常識化された正論への回帰衝動。

例えば浅野いにおの作品の主人公たちが、いずれにせよ唾棄すべきものと看做している二つの価値観(実は一体の価値観)の間での運動。ディストピア的観点でものを見よとは言わないけれど、やはりどこか思慮深さに欠けた思考と蔑まずにいられない自分がいる。

物語の中盤まで繰り返し表明されている主人公の思考・行動様式における奔放さのようなものと、終盤(解決編)の事なかれ主義的な態度とのあいだのこの乖離。納得がいかない・・・。