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米林宏昌『思い出のマーニー』


「思い出のマーニー」劇場本予告映像 - YouTube

作中序盤、主人公・杏奈のツンツントゲトゲしてるのがすごくよかった。もうずっとそのまま信念を貫いて行って欲しかったな…ATフィールド全開で。それではジブリ作品としてダメなんだろうけれど。

本作で杏奈が表象していたイメージ──人間不信で、対人恐怖症で、猜疑心にかられて、その反動から近づいてくる人間に対して攻撃的になってしまう「私」、その「私」自身への否定的評価からさらに殻に閉じこもってしまう主体──は、どれくらいの人に実感や共感をもって理解されたろうか。

それはそれとして。物語自体はシンプルであり、謎解きの最後には登場人物のモノローグによる解説もつく。けれども入江の海水面に反射する月光、梅の中で立ち込める霧、嵐の日、丘の上に不気味にそびえるサイロといった舞台の描写のうつくしさ(いつもながらのジブリの技巧)と、数世代に渡る人びとの生の積み重ねとして物語を提示するやり方が、作品に奥深さを付与している感じ。

近いうちにまた観たい。