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E・サイード『知識人とは何か』

知識人とは何か (平凡社ライブラリー)

知識人とは何か (平凡社ライブラリー)

ヴィヴェク・チーバーの議論を読んでいてすこし回顧するところがあったので再読中。

ある弱者集団の表象=代弁(representation)と支援が別の弱者の存在否定や蹂躙となるというのは、それこそ「日本」にこそふさわしい議論のテーマでもある。

問題の背景には、俗語出版語とそれによって記述されたコンテンツの流通が形成する「想像の共同体」と、その出版語を武器にして闘う知識人が表象=代弁すべき「われわれ」との、危険を孕んだ関係性もある。

フランツ・ファノンによれば、原住民の側にたつ知識人の目標は、白人の政治家の後釜に原住民の政治家をすえることだけではない。むしろファノンがエメ・セゼールから借りてきた表現を使うなら、新しい魂の創出こそ、目標となるべきなのだ。いいかえると、なるほど知識人が民族存亡の危機に瀕した共同体を支援することには、測り知れない価値があるにしても、知識人が生存のための集団闘争に忠誠をつくすことは、批判的感覚の麻痺や、知識人の使命の矮小化につながりかねないので避けるべきなのだ。知識人にとってなすべきことは、生存の問題を超えて、政治的解放の可能性を問うことであり、指導層に批判をつきつけることであり、代替的可能性を示唆することである…」(79ペ)