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学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

ノルベルト・エリアス『文明化の過程〈上〉』

文明化の過程〈上〉ヨーロッパ上流階層の風俗の変遷 (叢書・ウニベルシタス)

文明化の過程〈上〉ヨーロッパ上流階層の風俗の変遷 (叢書・ウニベルシタス)

彼の1つ下の世代にあたる歴史家たちが創始したアナール学派の著作のなかでもしばしば古典として言及されることになる歴史学社会学の書。礼節・礼儀・洗練・文明化といった時代ごとの概念で示された規範、それを作り上げ、再生産し、再解釈し、より複雑化させていった人びとの「ものの見方」を分析する作品。

こういう本を通勤電車内で読むのはおもしろい。なんとなれば、電車内というのは、常に更新され続ける「マナー」なるものをその空間を同じくする人びとが遵守したり逸脱したりする、現代における「社交」的な要素の凝縮された場のひとつと考えうるから。

電車内での化粧はそれを眺める側にとって何を意味するのか? ながら歩きする老若男女の背中はそれを眺めるものに何を想起させるのか? しばしば内輪の世間話に興じてひとの昇降を妨げて省みない人びとを見て何を思うのか?

それは「精神的欠陥」を思い起こさせる「病的」多動性かもしれないし、ひとびとが覆い隠しているものをあえて暴いてしまう「浅はかさ」とか、周囲のひとの動きに目を配ることのできない「人間的欠陥」、「都会人」が身につけていてしかるべき「自明のルール」を実践できないしそのことに気づくことさえできない「田舎者」への嫌悪かもしれない。・・・読みながらそうしたことを取り留めもなく考えてしまった。