M12i.

学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

朔ユキ蔵『黒髪のヘルガ』

寓意を何層にも織り込んだ物語、という感じ。
「少女」の潔癖と独占欲とが創り出したひとつの閉じた世界。彼女が眠りにつくとき人びとは記憶を取り戻して、「少女」でなく他の人間を愛する醜い生き物になる。そして彼女の目覚めとともに人びとはすべてを忘れ、ただ恥じらいのこころと醜いものを憎むこころ、「少女」を崇拝し王子を慕うこころを取り戻す。
矛盾と緊張を孕む残酷な世界。しかしいずれ人はこの摂理に気がつく、世界を閉ざしていた嵐は去り、「少女」は過去のものとなり、忘れ去られる。彼女はそれを待っている。
──そんな感じ。