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清水克行『喧嘩両成敗の誕生』

喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)

喧嘩両成敗の誕生 (講談社選書メチエ)

中世の「喧嘩」に関する処罰のあり方、それに対する人びとの「もっともだ」「やりすぎだ」「足りていない」といった種々の感想を平易に紹介してくれている点でよし。

ただ「喧嘩両成敗」もしくは「喧嘩両成敗的」措置の結果としての構図に執着しすぎ、紛争当事者双方が厳しく処断されることの、そこに至る意味というか、そうする時の権力者の意図が必ずしも正しく顧みられていないのではないかという印象を受けた。

「両成敗」もしくは「両成敗的」措置には、「平衡」「秩序回復」の意味が込められているケースと、私闘というかたちで検断という本来当事者らに行使を許されていない行為を行い、ときの権力者の権利を侵して秩序を乱したことに対する処罰という意味が込められているケースがあるであろうことは、まま容易に想像がつく。

前者後者の「両成敗」はそもそも処罰の次元を異にしている。前者は紛争当事者やそれを見守る世間一般の思いが権力者の口をして語らせているようなものであり、後者は惣無事令・喧嘩停止令に従わない無法を罰する権力の立場が彼自身の口をして語らせているようなものである。

本書にはそれらを「両成敗」を一緒くた(もしくは一報を無視)している印象を受けた。