M12i.

学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

住野よる『よるのばけもの』

よるのばけもの

よるのばけもの

どういうわけかある時から毎夜おぞましい姿の「ばけもの」に変身するようになってしまった少年の数週間の物語です。ふつうの中学生としての生活と、事実上無敵の「ばけもの」としての生活。陰湿ないじめが展開している昼の教室と、とくに不穏なあれこれはありつつも概ねは平穏の中にある夜の教室。あるいは主人公を安堵させつつも同時にどうしようもなく居づらくさせる保健室。そういう対称性が強調されつつも、実際はそれらのものが一つの「日常」を構成する部分々々でしかないこと。いじめは「異常」な実践ではなく、友情や恋心、進学や将来全般に関する不安、部活動への熱中や趣味への没頭といったものと同じ、それらとの間に分断などない「日常」の実践、私たちの生活を構成するふつうの慣習行動であり、そこにこそことの問題性があるということ。そういう告発の物語として私は受け取りました。