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M12i.

学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

是枝裕和『海よりもまだ深く』を観てきた


映画『海よりもまだ深く』予告編

はじめてこの人の作品を見ました。

阿部寛演じる主人公は、15年前に文学賞をとったきり作家でいながら作品作りに躊躇して何もできないまま、「取材」と称して探偵事務所で働き、クライアントや関係者を強請っては小銭を手に入れしかもそれをギャンブルにすっかり費やし、息子の養育費どころか自分のアパートの光熱費も払えていないという体たらくぶり。主人公の周囲、彼の母親、元妻、みんなそれぞれの意味で「こんなはずでは」と思うところある(あるいはそれを自分にも他人にも粉飾して済まそうとしている)人びとですが、やはり主人公が群を抜いています。


元妻や姉と主人公の間のピリピリ・トゲトゲした感じと、彼に呆れ返りつつも愛情を捨てきれない母親との間で繰り広げられるやり取りのしょうもなく笑いを誘う感じとが、いいバランスで混ざり合っていて映画全体の雰囲気を沈み込ませないようにしています。そしてある時、ふとしたきっかけで、主人公を15年前の時点から先に進ませなくしていた原因らしい問題が取り除かれるところで終幕。「過去にとらわれていちゃダメ」「今を懸命に生きるしかないんだ」そういうわりとポジティブな映画でした。