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藤野恵美『ぼくの嘘』

ぼくの嘘 (角川文庫)

ぼくの嘘 (角川文庫)

ふたりの文化祭』を読み終えた後でそれが連作のうちの一巻であることに気がついて──道理で主人公の「ふたり」はともかく主要な登場人物たちの描かれ方が中途半端なわけです──それで『わたしの恋人』とともに手に取りました。

例によってそれほど長くも複雑でもないストーリーでするする読み進められてしまいますが、三作のうちでは本書がいちばん深みがあるように感じたのは、「あたし」の語りが時間軸を持っているから、あるいは(そして)「ぼく」の倒錯しているようでありながら本質的な──人間が他人に対して「思いを寄せる」方法のひとつの純化されたかたちの半自覚的な実践のためか……。

それぞれはあくまでも連作の一部という感じなので切り離して考えても仕方ないのですが、三作のうちで本書がいちばんおもしろいと感じました。

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