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A・ブラッドリー『パイは小さな秘密を運ぶ』

パイは小さな秘密を運ぶ (創元推理文庫)

パイは小さな秘密を運ぶ (創元推理文庫)

1950年のイギリスの田園地帯。切手収集にしか興味のない父と意地悪な姉たち、そして執事とも庭師とも付かない従者とともに暮らす11才の主人公フレーヴィアが、身の回りで起きる事件の解決のためちょこまか駆けまわって・・・というシリーズ。

継続的に没落しつつある下層ジェントリ、生活の中に浸透しつつある電化製品、国家的・国民的ページェントを伝えるテレビジョン、原子爆弾と毒ガス、戦時動員と女性の社会進出、戦争神経症患者とドイツ軍捕虜などなど、時代性のシンボルをそこここに散りばめられた空間のなかで、警察に対抗心を燃やす主人公が小さなウソと家宅侵入と怪しげな化学実験を繰り返しながら「真実」に近づいていくさまがおもしろいです。

翻訳の中に「これはもしかして本来○○みたいな意味のセンテンスがあったのを訳しまちがえたのでは?」と思われる箇所が散見されるのがちょっと残念なところ。。

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