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大森葉音『果てしなく流れる砂の歌』

果てしなく流れる砂の歌

果てしなく流れる砂の歌

プランタン』からの流れでこちらも手にとってみました。叙述トリックめいた描写や、自在に寄生する霊的存在との駆け引きなど、ミステリー的な要素も含むファンタジーです。

巻末の解説でも触れられている通り、直近のアフガン戦争やイラク戦争の前後のできごとを原型とするとおぼしき箇所や、ベトナム戦争第2次世界大戦に関連する話題(枯葉剤散布、ユダヤ人迫害とシオニズム靖国神社問題など)をモチーフとしたらしい箇所などがふんだんに登場します。

その上で物語終盤において作者の「戦争」「平和」についてのひとつの思想が表明されていて、各種の舞台設定の意味がそこで明かされています。まあここに来るとその思想や幕引きの仕方について人により好みの分かれそうなところですが、私はわりと好ましい感想を得ました。