川北稔『砂糖の世界史』
- 作者: 川北稔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1996/07/22
- メディア: 新書
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ジュニア新書刊ということでフォントは大きく用語法も易しめ。対象読者は中高生と思われる。
『イギリス近現代史講義』で著者が述べている通り、テーマは世界システム論の実践であり、砂糖の生産・流通・消費(そこには綿織物や奴隷貿易も関係してくる)とそれに関わった各地域の政治的・文化的な背景とを結び付ける。砂糖を媒介にしてはいるがそこで論じられているのは近世・近代の海洋帝国の勃興から今日の南北問題に至るまでの軌跡であり、地域間の分業と格差の歴史である。
各章のあいだで重複した叙述がかなりあるので、何かに連載していたテキストがもとになっているのかもしれない。あと、ものごとの原因-結果関係と目的-遂行関係の混同(「AさんがBさんにXした結果Yになったのだから、AさんはYを目的にしてXを遂行したのだ」)が散見されるのは、巨視的な分析や初学者向けの通俗的解説にありがちなこととはいえちょっと残念。