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中島岳志『血盟団事件』

血盟団事件

血盟団事件

不況のなか極貧にあえぐ農村、富める者と奪われる者との格差がますます明確となりつつある都市の住人、哲学的な煩悶を抱える学生。

さまざまな生い立ち、さまざまな思想を持つ人物たちが、時代の閉塞感のなか、あるいは極右結社に惹かれ、あるいは左翼運動に共感をしながら、最終的に「一人一殺」のテロリズムに収斂していく過程をまとめた本。

五・一五事件の前段となる血盟団事件において、主要人物たちが抱いていた日蓮主義や革命思想は稚拙短絡で教条主義にすら満たないものではあるが、それが当時を生きる青年たちに提示された「可能態の世界」(私たちは何になれるか? 何ができるか? 何をすべきか?──という可能性/不可能性のイメージ)のひとつの反映物であると考えることが必要と思われる。