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かぐや姫の物語


かぐや姫の物語

10数年前に学校の古典の授業で読んだ『竹取物語』のある種の淡白さ、シンプルさと比較すると、本作の脚本はだいぶ深み(重み)がある印象。

「天からの授かりもの」である「姫」の養育に、純粋な使命感や親心だけでなく「姫」と自己との社会的上昇の志向をもってあたる竹取の翁。社会的上昇=「幸福」という等式を信じて疑わない彼とは対照的に、「姫」自身のこころをより近くで汲み取って尽くす嫗。物欲や権力欲の対象として「姫」に執着する貴族や御門。そうした人びとのなかにあって、自らの言動が思いもかけない結果をもたらしたことを知って深く傷つく「姫」……。そういう登場人物たちの心情をあらわすセリフや描写が印象に残る。

映像としては『SWITCH』の特集でも紹介されているけれど、CGと人海戦術により恐るべき品質が実現されている。鉛筆の線で描かれた映像は観るものにラフで素朴な印象を与えるけれど、これをつくるにはとてつもない労力がかかっているはず。贅沢なアニメだと思う。