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学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

橋本紡『ハチミツ』

ハチミツ

ハチミツ

家族/家庭論というのが面白いのは、実践と実感を完全に離れた話題だからだろうか。もちろんこれが基本一人称の記述形式じゃなかったら、とたんに緊張を孕んだ「面白い」とは割り切れないものになるのだろうけれど。いずれにしても、父親がいて母親がいて兄弟がいる、という家族像を当然視する、それがふつうのあり方だとする人びとからは、本作のような作品はまた全然異なる読まれ方をするのだろうとか。そういうことを考えてみたり。

橋本紡の作品はまだこの『ハチミツ』と『葉桜』しか読んでいないけど、この2作品には登場人物にも生活描写にも共通点が多い。ある物語で利用した素材を別の作品では別の構成の中で活用する、そうして既知のパーソナリティ、既知のコンテキストに、未知の展開がありえた、別の「可能性」がありえた、そういうことを示していくのが、この人の意図するところなのだろうか。