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学術書・マンガ・アニメ・映画の消費活動とプログラミングについて

渡辺ペコ『ボーダー (1)』

ボーダー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ボーダー 1 (ヤングジャンプコミックス)

“同棲や夫婦関係なんてものに気詰まりや緊張関係以外のなにを期待できるの?”というのが自分の予断としてあって、『にこたま』とかはしんどい感じ。それでパスしていたのだけど、元来この人の表現は好きなので、今回また新しい連載が開始になったので読み始めた。

しんどく感じたのはたぶん同棲がテーマだったからというより、それぞれ腹に思いを抱え込んだ主人公たちがその思いのとくに尖った部分を見せ合いながら物語が進んでいく、というのが渡辺ペコのスタイルだからかも知れない。

それぞれの登場人物たちの“思い”は読者に対しては開示されており、けれども当然登場人物たち相互の間では部分々々が本音や虚言として交換されるだけ。

ひとの皮の中側に何が渦巻いているのか分かったものではない。けれども翻って(ひとにもよるだろうけれど)“内心を知る”というのもたぶんに恐ろしいことである。この『ボーダー』も含めて作者の表現スタイルがそういう(わたしの)恐怖を煽るようなところがあるらしい。

読んでみて、相変わらずこの人の画もコマ割も内心吐露の記述もうまいなぁと思う。次巻がすでにして待ち遠しい。