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カルロ・ギンズブルグ『夜の合戦―16~17世紀の魔術と農耕信仰』

夜の合戦―16~17世紀の魔術と農耕信仰

夜の合戦―16~17世紀の魔術と農耕信仰

異端審問の記録から、中世のフリウリ地方において“ベナンダンテ”を自称した人びとの変性の過程を見つめる書。

16世紀末、毎年決まった日に肉体を残し霊魂だけになって“夜の合戦”に馳せ参じ、不作や衰弱による早死を運ぶ魔法使いたちと戦って、豊穣をもたらし破魔をなす。
胞衣にくるまって生まれてきたゆえの運命にしたがって農村社会の守護者として闘ってきた彼らは、しかしその後おおよそ半世紀のうちに、教会の「魔女」概念のなかに文字通り骨抜きにされながら吸収されていく。

この本は全編をとおして異端審問記録や民間伝承の史料をあげて分析しているけれど、結論のようなものを述べる部分はあまりない。上述の変化については、冒頭ですでに明らかにされており、あとはそれを史料をあげて例証していくだけ、といった感じ。

この点あまり釈然としないところもあるが、農村社会の人びとの間で受け継がれる心性のコンテクストのようなものとその変化を追うのはおもしろかった。


カルロ・ギンズブルグ『チーズとうじ虫』 - M12i.