もののけ姫
- 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
- 発売日: 2001/11/21
- メディア: DVD
- 購入: 15人 クリック: 320回
- この商品を含むブログ (265件) を見る
しばらくぶりに観直して、この作品が文明と自然というようなある意味でわかりやすい対称関係(対決関係)を描きながらに、それだけには終わっていないことに気がついた。
おそらくすでに19世紀より描かれてきたこの対比関係のさらにもう一段先では、他を滅ぼしながらしか人間性を回復できない社会の矛盾だとか、他者のいのちを喰らいながらしかまっとうに生きることのできない現実だとかを、たたら場の人びとを通して表象させているように思う。
あるいはそうした瀬戸際での生を彼女たちは主体的な生として、人間性の回復として実践しているけれども、それが実際には強いられた生でもあって、たたら場は彼らにとって最後に残された生きる場所でもあり、そこは常に周囲の人間社会との緊張関係にあるということ。そういう背後を絶たれている彼らが、失われたものを取り返すために切り取るのが“森”であるということ。
そこに今も昔も相も変わらず繰り返される、持つ者と持たざる者、相対的に持たざるがゆえに持てる者たちの最前面に立ってむしり取る役目にあたらねばらない者たちからなる人間社会の構図をみることもできよう・・・。
終幕にあたってサンとアシタカが語り合い確かめ合っているのはそうした諸々の不条理や緊張関係でもあったのだろうと。