5月中旬までの読書
オリエンタリズム
まず、ひさびさの再読であった『オリエンタリズム』の上巻をなんとか読み終えました。
原文によるものか翻訳によるものか、章によってやたら難易度があがったり、かと思えばすらすら読めたりという波のあるもので、上巻は最後の3章がたいへん分かりづらいものになっています。
現実世界と可能世界
下巻はひとまず置き、予告通り『現実世界と可能世界』を読了。
こちらは序論・終論で表明されている知識哲学的なテーマが、本編内で必ずしも実行されているようにも思われず、疑問。
とまれ、レヴィ・ストロースの用語を借りながら生物学史を、例によって平易なかたちで解説しているところはさすが。
記号と再帰
『記号と再帰』は期待はずれでした。記号モデルの二元論・三元論の対称を、HaskellとJavaの対称や、もっと一般的に、関数型言語とオブジェクト指向言語の対称にかさねる論法が、まったくもって強引。読むに絶えず、途中で放棄しました。
『日本語が亡びるとき』もそうでしたが、学問的な装いをとりつつ○○大賞を受賞していたりするテキストというのは要注意なのかもしれない、と思いました(『亡びるとき』はぜひどなたも読まないでもらいたい本です)。
眠れなくなる宇宙のはなし
『眠れなくなる宇宙のはなし』は、アインシュタイン以来の現代宇宙物理学の最新事情の、日本国内の一般向けの紹介者であり、自身研究者でもあった、佐藤勝彦氏のエッセイです。
ジャンルのこともあってきわめて平易な論述がなされていますが、科学史観(≒知識哲学)があまりにも自生的(非反省性的)であるのと、理論的解説がウルガタ化している(ともかく平易に話をしようとするあまり説明対象が意味を失ってしまう)ことが残念。